会員の皆様へ
市民劇場2023年5月例会の感想
「観劇まんまる」サークルの清水 宏香さんが2023年5月例会の感想をFacebookで公開しています。
会員絶賛の素晴らしい感想ですので掲載いたします。
徳島・鳴門市民劇場5月例会
劇団1980「素劇 楢山節考」 作・深沢七郎 演出・関矢幸雄
信州の山深い寒村に伝わる『楢山節』この歌を主軸に、70歳になると楢山に詣るという掟の日を心待ちにする老いた母おりんと、共に暮らす息子の辰平を中心に、辰平の後妻、子供達、長男の嫁、隣家の又やんと息子等人々の暮らしやそれを包み込む四季の風景を、素劇により描き出します。
その物語自体はあまりに有名、どうしても『姥捨山』のイメージが強くて、悲しい結末が分かって観るのはちょっと辛いなぁというのが観劇前の正直な思いでした。
しかし、舞台が始まると、明るいのなんの!家族の生き生きとした暮らしぶりは本当に賑やかで楽しくて、客席からは笑い声が上がっていました。
生き生きとしているのは家族や村人だけではありません。
カラスの声とユニークな仕草。夏蝉の多種多様な煩い音、そして信州の冬の木枯らしの泣き声などなど。
こういった自然の物も、人が演じていて、音響とは違う生命力を感じました。
素劇とは、白い紐、小枝、黒い箱だけで様々な場面を創り出し、想像力をかき立てるという関矢幸雄氏が提唱する演出方法です。
白い紐を持ち上げてピンと張れば忽ちおりんの家になったり、枝を持って立てば木々に、斜めに掲げれば山になる、箱を傾ければどぶろくに、といった具合に、色んな物が瞬時に生まれては消えて行く。アレコレ観ながら気づいて行くのも心地良かったです。
おりんは、楢山行きを心待ちに、隣の又やんは怖がるという相反する2人。又やんの存在はとても人間らしく、おりんの心の持ち様をよりくっきりとさせていました。
中盤に3歳の子・すえを寝かしつけながら語るおりんの楢山への想い。その歌声は祖母から孫への命のバトンの様で胸に迫ります。
物語は寒村の貧困にも触れています。
近所で食糧を盗む者があり、皆で袋叩きにして盗品は分け合う、盗人の家の者は暗黙に消されるという暗い部分も容赦なく描写されます。
この影の部分こそが光を際立たせる。生きるという事の厳しさ、命の大切さをより明確にするのです。そしてこの楢山節を考える上でも無くてはならないシーンだったと思います。
おりんを背負っていよいよ楢山へと歩く息子の辰平、ここからはもう涙無しにはとても観られませんでした。
2人の言葉はほぼ無く、語りで心情や行動が伝えられるのみ。
そして最後の別れは無音。圧巻の無音のシーン。素劇だからこその余白が、言葉を超えて心を揺さぶります。大号泣で嗚咽を必死で堪えました…。
物語のラストは、生きている人に帰って来ます。
これが本当に良かったです。
命がこうして繋がっていくんだ。
決して姥捨を肯定する物でも美談と讃えるわけでも無いです。
しかし、動物は皆生まれて死ぬ。先の死を思うからこその今の命の輝きが、この楢山節考には刻まれていました。
火曜日に観劇しましたが、家に帰ってからも涙が止まりませんでした。今も思い出しながら泣いてます(本当です)。
素劇、凄まじき。筆舌に尽くし難き。
と言いつつめっちゃ書いてますいつも通り。
また一つ素晴らしい演劇に出会えました!
※感想の部分を抜粋しています。
全文は下↓のリンクからご覧いただけます。(Facebookページが開きます)
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例会にお越しの際は是非ご活用ください!
(2020.07.06)